土vs風。
ドサリ、という音が響いた。
一人の女性に襲い掛かろうとしていたクマ型のモンスターが声一つ上げずに崩れ落ちる。
 
「やーれやれ。誰に牙剥いてるか分かってんのかしら」
 
杖を弄びながら呟く女性の名はミラーシュ。
所々にレザーをあしらった紫のドレスに編み上げブーツという出で立ちの彼女は、長い髪を風に靡かせてつまらなさそうに言う。
 
「はぁ………なんか最近弱っちいのばかり。どっかに骨のある奴はいないのかしらねー?」
 
その時だ。
ヒュゥゥゥゥという風の唸り声がミラーシュの耳に届いた。
不審に思い振り返ったミラーシュの背後には、一人の少女が立っていた。
 
「あら、あらあら。私の可愛いぐりずりーちゃんをイジめてくれたのは、貴女ですの?」
 
ゴスロリドレスの少女は言う。その声は歌うように滑らかだ。
対して、ミラーシュはその美しい顔に荒々しい笑みを浮かべてこれを迎える。
 
「ぐりずりー、っていうのはさっきのクマちゃんの事かしら?…………ごめんねぇ。あんまり脆くて、本格的にイジめる前に死んじゃったのよ」
 
そして、
 
「で? 次は飼い主が相手してくれるの?………風魔女さん?」
 
「まあ実際、あの美しくもないクマ公はどうでもよかったのですけれど……………そうですわ。記念すべき1001枚目に土魔女の匂いが染み付いたモノを手にするのも悪くはありませんわね」
 
風魔女、クイ。
これまで彼女を取り巻いていた風が質を変える。
轟! という音を立て、彼女を中心に嵐のような暴風が吹き荒れた。
側に立っているだけで完全に捲くれ上がりそうになるスカートを両手で押さえ、ミラーシュは目を細める。
 
「ふぅん…………じゃ、そっちもそれなりの覚悟を決めておく事ね」
 
彼女が地面に杖を突き立てる。
ボコボコボコッ! と周囲の土が隆起し、集まって一つの姿を形造る。
現れたのは、7メートルを軽く越えるゴーレム。
 
「行くわよ? アンタにパンツを取られたって泣いてたミリアの仇、取らせてもらうからっ!」
「貴女こそ。全裸で泣いても知りませんわよ?」
 
土と風が、激突する。
 
 
風に削られながらも、ゴーレムは確実にクイへと進んでいく。
 
「あらあらどーしたの? これじゃあっけないじゃない」
「っふふ……………ご心配なさらず、にっ!」
 
不意に風が止んだ。
正確には、これまで吹き荒れていた風が全てクイの掌に集束している。
ゾッ! とミラーシュの全身が総毛立った。
慌ててゴーレムに盾となるよう指示を送るが、遅い。
 
「覚悟はよくて? 土魔女様」
 
ゴォッ! と爆風の槍が放たれた。
それはゴーレムの腹部を易々と貫通し、ミラーシュの元へと殺到する。
 
(やばっ…………!?)
 
咄嗟に土を集めて頭だけはガードしようとするが……………クイの狙いはそこではない。
風槍はミラーシュに届く寸前、拡散し元の暴風になったのだ。
突然足元から生じた浮力に対応出来ず、ミラーシュの身体が宙に投げ出される。
 
「あっ…………まずっ…………!!」
「っふふ…………捕まえましたわ」
 
風はクイの手足。
パチン、と彼女が指を鳴らす。
 
それだけで、ミラーシュの身に付けていた物は、ブーツと下着を残して全て千切れ飛んだ。
粉々になった紫のドレスのカケラ。宙を舞うそれらをしばし呆然と眺めていたミラーシュ。
彼女とて女。
突然襲い掛かる羞恥に対応出来るワケもなく、顔を真っ赤にして必死で身体を隠す。
 
「ぁ…………ぃやっ………!」
「いい眺めですこと」
 
しかしそれは無駄なあがきだった。
再びクイが指を鳴らしただけで、ミラーシュの身体は強制的に大の字に開かせられる。
赤いブラと紐パンティが隠せずに晒された。
 
「ゃ、やめて…………」
「それでは…………お楽しみの時間ですわ」
 
クイの小さな手が、ミラーシュのパンティの紐の結び目を解く。
ぺろん、とパンティが前後に垂れ下がり、ミラーシュの大事な所がさらけ出された。
 
「ぁ…………あぁっ………!」
 
秘所の茂みに直接風が当たり、羞恥で目を開けられないミラーシュ。
する方は得意でもされる方は苦手な彼女は、こうした羞恥攻めに抵抗がないのだ。
 
「くんくん…………ああ………いい感じに汗と女の匂いが染み付いていますわ」
 
ミラーシュのパンティを鼻に押し当て、品定めしているクイ。
しかしその行為は、風の制御に少しの乱れを起こした。
その隙を見逃すミラーシュではない。
 
「はぁっ!」
「はぶらばぁっ!?」
 
渾身の力を込めた前蹴り。
ブラとブーツのみという不格好な状態のまま拘束から逃れたミラーシュは、すぐに魔法を発動。
吹き飛ばされたクイの周囲の地面が盛り上がり、彼女の両足首を掴んで逆さ吊りにした。
はらりとクイのスカートがめくれ、へそから下が丸出しになる。
更に呪文も唱えさせない為に口も土で塞いでおく。
 
「形勢逆転ね……………にしても、まあ」
 
剥き出しになったクイの股間の辺りを見て、ミラーシュは愉快そうに言った。
 
「風魔女さんは、ノーパン健康法でも試しているのかしら?」
 
クイは、下着をつけていなかった。
長いゴスロリスカートの下は、ハイヒールとニーソックス、ガーターベルトのみだったのだ。
今まで誰にも見せた事のない、更に言えばまだ生え揃ってさえいない股間を他人に見られ、クイは羞恥で気が狂いそうになった。
地面に落ちていたパンティを履き直しながら、ミラーシュは言う。
 
「さて…………それじゃ、お仕置きといこうかしら?」
 
ミラーシュの指がクイの服に触れた瞬間、彼女の服はまるで溶けるように地面に落ちていく。
後に残ったのは、ハイヒールとニーソのみを身につけた全裸の少女。
脚は覆われているが、肝心なところがことごとく丸出しである。
 
「〜〜〜! …………っ!」
 
必死で何か言っているが、口を塞がれているためミラーシュには聞こえない。
 
「今まで旅人に好き勝手やってきた罰よ。優しい人間が来るまで、そこで吊られてなさい」
 
今度こそ顔を真っ青にするクイ。
ここは街道だ。
今は夜だが、当然昼には人通りがある。
つまりその間、クイは全裸を、小振りな胸を、まだ中途半端にしか毛が生えていない股間を丸出しにしたまま…………。
 
「…………っ!! 〜〜〜〜っ!?」
 
涙を流し、鼻水を吹き出して懇願するクイ。
しかしミラーシュは一瞥しただけで、ブーツを鳴らして去ってしまった。
 
 
当然『優しい人間』などそう要るハズもなく、風魔女クイはその幼い裸を多くの人に見られる結果となった。
とある勇者と占い師に保護された時には、彼女の心はボロボロであったという。
 
これに懲りて、クイはしっかりパンティを履き、もう女性の下着を剥ぎ取るような真似はしなくなったとさ。
 
めでたしめでたし……………?

 

 
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