プロローグ・ルイン。
大会前日−−
ルインは宿で閉じこもっていた。
召喚士の彼女はガイコツの剣士から氷の女王果てはドラゴンさえも召喚できる
実力の持ち主である。
中でも氷の女王は彼女が個人的に契約を結び、もはや親友以上の関係である。
当然、大会でも女王の力を借りるため一緒に出場する予定であった……のだが、
「ああ、それはレギュレーションの違反になりますねー」
大会の受付で思わぬ言葉を浴びせられてしまった。
詳しく聞くと、この大会においては召喚術においては試合内での召喚した物のみ参戦が認められているそうだ。
使い魔もそうだが、他の力をいくらでも呼び出せば有利というのが理由だからだそうだ。
ルインはそれも召喚士の力量の内だと思ったが、クールな彼女は文句は言わず冷静を装った。
召喚術は大物になればなるほど、魔方陣が複雑になりまた時間もかかる。
対戦相手がその間のんびりしてくれるとは思えない。
「どうするつもりなのだ?」
ベッドに横たわっている氷の女王がルインに尋ねる。
「今考えているところよ」
ルインはウェーブの掛かった銀色の髪を手でかき上げる。
試合中に短時間で召喚できるものはガイコツの剣士など低レベルのものに限るだろう。
それらをいくつ召喚した所でライバルの勇者候補達ならいとも容易く倒すことだろう。
そうなればルインは本人の力で相手をしなければならなくなる。
自慢ではないがルインには腕っ節には自信がない。
接近を許せばあっという間に素っ裸にひん剥かれてしまうであろう−−大勢の観客の前で。
そんな恥ずかしい未来を想像してしまい体を震わせる。
何としても解決策を考えれば。ただ、試合は明日である。ここ数日考えてもいい案が浮かばない。
「我にいい考えがあるのだが」
氷の女王が口を開く。
「! さすが……貴方を召喚してほんとうによかった」
ルインは氷の女王の手を取る。
「……逆転の発想をする。そなたが我を召喚するのではなく、我がそなたを召喚する」
「へ? どうやって」
「我が呼ぶまで地面にでも隠れていて、呼んだら出てくれば良い」
「はぁ……貴方ってすました顔で冗談を言うのね」
呆れた顔をしてじーと氷の女王を見つめる。
「駄目か。更に一つ案があるのだが」
「はいはい、実現可能なものにしてよ?」
ルインはもはや話を半分にしか聞いていない。
「我がそなたのマントの中に忍び込んでいよう。折を見て外へ出るのはどうか」
「うーん……それしかないかもしれない」と同意しつつ「でも、貴方のそばにいると凍えない?」
「物は試しというではないか。いつものブカブカのフードを羽織ってくるがいい」
「わかったわよ」
ルインは氷の女王に促され、下着の上からすっぽりと顔まで覆う黒いローブを身につける。
それを見てからもぞもぞとルインの背後の隙間に入り込む女王。
女王は最初から殆ど半裸であるのだが。
「狭いな……」
「意外と寒くないね」
「まあな、出来る限り冷気を抑えている……何とか行けそうだな」
「そうね……あっ、あまりモゾモゾ動かないでくれる?」
「無茶を言う……」
「ん……周りからはわかんないかも。でももうちょっと寄って」
「こうか?」ぴと
「……あっ」
「なんて声を出している」
思わず出た声に氷の女王が苦笑する。
「変なとこ触んないでよ……」
「自分の身体が変なのか」
「違う、そういう意味じゃない……あ、あと。おっぱいが当たっているわよ引っ込めて」
「無茶を言うな。そなたの胸を引っ込めるが良かろう」
女王はそう言うとルインの胸に手を回し、手のひらで抑えつける
「ぁっ……ちょっと。そこ触らないでよっ」
「案外柔らかいものだな。大きくはないのに」
「ッ……やめてったら」慌てるルイン
「この状態でうまく動けるよう、明日まで特訓だな」
「手、手を離しなさい。言ってることはわかるけどやってることがわかんない……ああああっ、乳首を摘まないでっ!」
顔を真っ赤にして抗議するルイン。
ルインは氷の女王との特訓の成果で周りからは不自然に思われない程度になりました。