風の塔-<おもちゃの部屋>-。
ギィィィ……

重厚な音を立て扉を開く。
「……あの、お邪魔します」
おっかなびっくり中を覗き込むミリア。
縫いぐるみ、木の積み木、ペダルで漕ぐ車、ブリキのロボット……
その部屋の中は、おもちゃで満ち溢れていた。
まるで子供のおもちゃの部屋のよう。
「わあ……」
おどろおどろしい塔の外観と内部のギャップに驚くミリア。
ガサゴソ……
部屋の片隅で何かが動く音を聞いた。
「(え……誰かいるの?)」
ミリアは目を凝らして音のした辺りを見る。
ガサゴソ……
床に落ちている赤い靴下が動いてる。
「え……なに?」
「あー、見つかっちゃったョ」
のそのそと靴下から何かが這い出てくる。
「もー、入ってくる時ノックくらいしてョ」
手のひら大に小さくて、透明な羽の生えていて。
「あ……ご、ごめんなさい」
謝りながら目をパチクリするミリア。
「あの、違っていたらすみません……妖精……?」
「そうだョ、妖精のストライプというョ」
羽を動かして、ミリアの目線の高さまで飛び上がる。
「わぁ、妖精初めてみました。わたしミリアです」
「聞いているョ。侵入者さん。このストライプはこの部屋の守護者だョ。
 ミリアの足止めがお仕事なのョ」
体をいっぱい動かしてえへんと胸を張る。
「そんな……」
「それぞれの部屋で妖精を見つけて、妖精の課す試練を果たせば、次の部屋にいけるんだョ。
 でも、ストライプは隠れる前に見つかっちゃったから困ったものだョ」
「ご、ごめんなさい。知らなくて」
再び頭を下げるミリア。
「いいョ。じゃあ早速試練を伝えるョー?」
「え、う、はい」
いまいち飲み込めてないミリア。
「試練は『スカートをめくってパンツを見せる』だョ」
可愛い顔でとんでもないことを言う妖精であった。
「え、え、もう一度言ってください?」
聞き間違いかと思って聞き直すミリア。
「『スカートをめくってパンツをみせる』だョ。なぜならここの妖精はパンツの妖精だからだョ」
「あ……ひょっとして、頭にかぶってるのって、パンツ……?」
妖精のふわふわした髪の上に布製の何か帽子のような物がかぶられている。
「そうだョ」
「(ガーン)初めて出会った妖精が、パ、パンツの……」
ショックを受けるミリア。
「時間が押しているョ。早くめくるといいョ」
「え、う……ぅー」
ミリアはただでさせ断るのが苦手なのに、今回はフロンリーフを助けるという使命を帯びている。
妖精の言うとおり躊躇して無駄に時間を消費する訳にはいけない。
「わ、わかりました……」
ミリアは膝丈のスカートの裾をぎゅっと掴む。
妖精はミリアから少し離れホバリングしながらミリアの動作を伺っている。
ドキドキ高鳴る胸を落ち着かせようと数度、深く息を吐く。
「あの……あまり見ないでください……」
妖精の視線をを妙に意識してしまう。
「これも試練だョ、頑張るんだョ、ミリア」
覚悟を決めたミリアは目をぎゅっとつむり。
「……はぃっ」
と、勢い良くスカートをまくり上げた。
「はー。ぜんぜんだョ……もっとまくりあげないと見えないョ」
やれやれといった表情の妖精。
現状では腰の近くまでまくりあげている。
「え……そんなぁ」勇気を振り絞ったのにダメ出しされてしまう。
「逆に下がってきたョ。このままじゃ失格だョ?」
「う、うー……」
もう一度勇気を振りしぼって、今度は羞恥心と闘いながら少しずつ持ち上げていく。
ちらちらと現れる白いふともも。
「あー、もうちょっとで見えそうだョ」目を輝かせる妖精。
緊張でミリアのスカートを持つ手が震えてくる。
布製の白いものがチラリ。
「ま、まだ……?」
「見えたけど、まだまだだョ。白だョ」
「えっ……やん」
いつの間にやら、スカートを握るミリアの手や、背中から汗が噴き出している。
更に上へと震える手を動かす。
「ああーん……まだですかー?」消えるような声で懇願するミリア。
既におへその辺りまで来ている。
「まだまだだョ、これ以上持ち上がらないところまでだョ」
「えーん、意地悪……」
ミリアの質素な白いパンツが丸見えになりつつあった。
真ん中にはピンクのりボンがついていた。
「ううう、お願いです……もう許して下さい……」
ほぼ胸の近くまでスカートをまくり上げていた。
自然とスカートを握る手に力が入る。
「しわになっちゃうョ。じゃあ、何があっても、そのままの状態だョー?」
妖精はミリアのパンツの目前まで飛んで移動した。
「っ、ぃゃ……近いです……」
「ふんふん、成の程なるほどだョ」
肩を震わせて妖精の視姦に耐えるミリア。顔も真赤。
「シマシマ柄じゃなかったのは残念だけど、ミリア、合格だョ!おめでとうだョ」
「っ……!」ぱっとスカートを整えるミリア。
「次の部屋へ連れて行ってあげるョ」
そう言うと、妖精はミリアを魔法のシャボン玉に入れて、次の部屋を目指して飛ぶ!


最上階の部屋――
「お姫様、10分経ちましたわ」
クイが膨らました風船をフロンリーフのスカートの裾に付ける。
「……っ」
風船は2つ目。
正面前と背後にそれぞれ1つづつついて、そこだけ裾が不自然に少し浮いている。
フロンリーフの細い足がちらちらと見えている。
「(ミリアさん……急いでください……)」
フロンリーフの不安な心の声がミリアに届いたかどうかは定かではない。
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