敗者即H-ゲーム-婆抜き-。
§婆抜き§<2人対戦用特別ルール>
◇使用カード 28枚◆
内訳)1〜13×2種, 婆×2枚

手順)
[1] 1〜13までのカード2セット, 26枚と婆を1枚ずつプレイヤーに渡す。※公平を期すためスタート時点では婆を2枚使用する。
[2] プレイヤーは交互に相手の手札からカードを一枚ずつ抜き, 自分の手札に加える。
[3] このとき、加えたカードが自分の手札にあるカードと数字が揃えば、そのペアのカードを場に捨てる。
[4] 婆を引いた場合…
  手札にも婆が残っている場合、1枚だけ婆を捨てる。
  手札に婆が残っていない場合、何もしない
[5] 3-5を繰り返し、先に手札からカードがすべてなくなった方の勝ち。
補足ルール)
[6] 相手の顔を見ながら引く。どちらも顔を逸らしてはいけない。
[7] カードを抜いても、ひっくり返してカードを確認するまでは確定しない。
 それまでは抜いたカードを相手の手札に戻すことも可能である。




テーブルをはさみ、ミリアとフロンリーフが対峙している。
競技は「婆抜き」である。

1巡目



「あのっ、フロンリーフ様。本当に真剣勝負でいいんですか?」
「もちろんです、ミリアさんが手を抜いたりしたらあとで怒りますからね」
『ババ抜き対決開始です』
司会の天女より合図がかかり、観衆から拍手が送られる。

「では、引きますね……えい」
ミリアの手番、フロンリーフが持つ14枚のカードのうち、一枚を引き抜く。
「やったっ、揃いました」
12がそろい場に捨てるミリア。
「二人ですからね、ジョーカーさえ引かなければ、必ずそろいますよ」
姫の手番、ミリアのカードを端から順番に指で触れて、ゆっくりとミリアの様子を確認する。
「は、早く引いてください」
ミリアは緊張に耐えきれずせかしてしまう。
「ミリアさん……もしかして、これ?」
フロンリーフがジョーカーを指先でつまんで見せる。
どきっ、とミリアの心臓が跳ねる。
「……そんなこと言えません。これがジョーカーじゃないなんて言えるわけがないじゃないですか、勝負にならなくなっちゃいますっ」
焦って、早口でまくし立てるミリア。
「ほんとうですか?」
少し、指先で引っ張って上に持ち上げるフロンリーフ。
「っ……」
ジョーカーを引いてもらえると思い、はっと緊張した表情を見せてしまう。
「ん…、これは怖いのでやめて、隣にしますね」
「ぇっ……」
隣の7を引くフロンリーフ。
「え?今のえ、はどういう意味ですか、ミリアさん」
楽しそうにからかうフロンリーフ。
「。。な、なんでもありません」

2巡目



ミリアの番。
今回はミリアも、フロンリーフの真似をしカードを触りながら
フロンリーフの表情をうかがう。
「あの、ミリアさん。あんまり真剣に見つめられると、照れてしまうのですが…」
「す、すみません。すぐ済みますから…」
ミリアはあるカードに触れた時に、フロンリーフの眉がぴくりと動いたのを見逃さなかった。
わずか数ミリだがミリアの洞察力によって見破れたのだ。
ミリアはそれが婆だと感づき、その隣のカードを引いた。
「これっ!」
勢いよくカード引き抜くミリア。
「……って、ジョーカーですー!」
ミリアの引き抜いたのは婆であった。
「ふふ。まんまと引っ掛かりましたね、ミリアさん」

-1枚目のジョーカーがひかれたため1枚場に捨てます-

3巡目




「いまわたしはどれをひこうがセーフなんですね…」
ミリアは13をひいた。
「ですね、わたくしはどれにしましょうか…」
フロンリーフは3を引いた

-フロンリーフはミリアの表情や仕草から婆の位置予想し数字をひき続けた-

4巡目

ミリア2をひく

フロンリーフ10をひく

5巡目

ミリア4をひく

フロンリーフ6をひく

そして6巡目

ミリアは無造作に11を引いた。
ここで、ついにフロンリーフが婆をひいた。
「っ……フロンリーフ様、それジョーカーです」
「ミリアさん流石です。表情や所作に違いが出てこなくなりました」
「あの……どうせフロンリーフ様はジョーカー引いてくれないと思ったら、感情が消えてました」
「まあっ」
フロンリーフは目を丸くしてから、
「では、これからは感情が戻って来そうですね!」

7巡目


「あと2回、ジョーカーをひかなければ……ひかないように……」
いきなり勝機が転がり込んできて、ようやく慎重さを取り戻したミリア。
「さあ、ミリアさん、どれにしますか?」
不敵な笑みを見せるフロンリーフ。
慎重に札を選ぶミリア……
「これが、怪しい……けど、フロンリーフ様はまたひっかけかもしれないし」
ミリアは怪しい札の隣のカードに手をかける。
「本当に、そのカードでいいんですか?」
「じゃあ、やっぱり……これっ!」
急に思い直し、怪しい札から一番離れたカードをひくミリア。
引いたカードは婆ではなく3。
「わー、よかったー!」
「む」
フロンリーフは悔しそうな表情を浮かべながら、ミリアの手札から一枚ひく。

8巡目


「あ、あと一枚になりました」
「ミリアさんが、5をひくとわたくしの負けですね」
「はい、ジョーカー引いたら勝負はまだつきません」
ミリアはフロンリーフの手の中で残り2枚になったカードを見比べる。

「さあ、ミリアさん……どちらを選びますか」
フロンリーフの声もやや上ずって聞こえる。
二人とも手に汗握り、緊張で指先が震える。
この数秒が二人にとって長く感じた。
「これに、します」
ミリアがひこうとすると、フロンリーフがカードを強くつかんで離さない。
「フロンリーフ様?!」
「ミリアさん、本当に、こちらでいいのですね?」
「は……はい」
ミリアが札をひく――そして。
ゾクゾク……と背中に電流が走った。
「あの……まだ見てないので、やっぱりこっちにしていいですか?」
「ど、どうしてですか?い……いけません……」フロンリーフは狼狽する。
審判の天女が口をはさみむ。
『ルール上は、引いたプレイヤーが札を見るまでは変更に問題ありません』
「嫌な予感がしたので、交換したいです」
「本当に、交換しますか?そちらがジョーカーかもしれませんよ?」
フロンリーフから余裕が感じられないため、逆にわざとらしくも感じ、変更しないほうがいいかもしれないとも思うミリア。
「もう、直感を信じます」
ミリアはカードを返し、残りの一枚を引き抜く。

そのカードは――5

「そろい……ましたっ!やりましたっ!」
拳を握り喜ぶミリアと、
「あああああああんっ」
テーブル台に突っ伏すフロンリーフ。
目次