ローパー退治。 |
「あーあっ、はやくルルかえってこないかなぁーっ」
タオル一枚で申し訳程度に身体の前面を覆ったミリアは、森の中でルルの到着を待ちわびていた。 またしても服を失ったミリアは、ルルが街で着る物を買ってくるのを待っているのだった。 すでに日が傾いて久しく、あたりは薄暗くなり始めている。夜になれば夜行性の動物やモンスターが活動を始める。 「やだようー。怖いようー」 剣はあるものの、ほとんど身体を覆う役にも立たないタオルだけでは、あまりにも心許ない。 ガサッ、ガサガサッ。 突然背後の茂みから音がする。 「ひぃぃぃっ!!」 タオルを胸に握り締めたまま、不恰好に剣を構える。 出てきたのは野鼠だった。 「ふぇええぇん。ルルゥー、はやくぅー」 ◇ 「ミリアさん!きたわよ!」 「炎の精霊よ、刃となりて薙ぎ払え!」 セリナの範囲魔法がローパーの一群を嘗め尽くす。魔法を逃れた数匹のローパーは、焦げ目をつけて二人に襲い掛かってくる。 ミリアが森でひとり取り残されていた時から、さかのぼること数時間前、ミリアは魔法使いのセリナとローパー退治に来ていた。 「えーい、えいっ、えいっ」フラフラのローパーにミリアがとどめを刺していく。 ローパーは人の背丈ほどの円筒形の体から無数の触手が生えたモンスターだ。単独では強くないが、旺盛な繁殖力で、人間に襲い掛かり身動きをとれなくしてしまうこともある。 「セリナさんの魔法は強いですねぇ。あたしひとりじゃ、こんなにいっぱいのローパー、絶対倒せないー」 「いえいえ、わたくしの魔法だけだと、懐に入られて魔法を撃ちつくしてしまいますからね。ミリアさんがいらっしゃってこそです」 「いえいえ、あたしなんか、ただのお手伝いですよぉー」 「ミリアさんのほうこそ、正確な剣筋で安心してまかせられますわ」 「とーんでもありません。あたしなんて剣に振り回されるほうで・・・」 「いやいや・・・」「いえいえ・・・」 遺跡に入ってからの二人は、互いにずっと謙遜しあっていた。 セリナの魔法が放たれる。ミリアの剣が閃く。燃え上がる。切り刻まれる。 「はぁ、はぁ。そろそろローパーの親が近いようですわね」 ミリアが話しかける。 「そうですわね。突き当たりの広間がきっとローパーの巣ですわ」 襲い掛かってくるのは若く小ぶりなローパーばかりになっていた。 「ちょっと、魔法の準備をしたいのですけれども、よろしいでしょうか?」 「わっかりましたぁー。あの部屋に入りましょう」 部屋に入ると素早くセリナが閂をかけた。 「ふぅふぅ」「はぁはぁ」 中のローパーを片付けてみれば、入り口がひとつしかない小さな部屋だ。 「休むにはうってつけのロケーションですねぇー」 最後のローパーにとどめを刺しつつ、ミリアは背後のセリナに声をかける。 「くすっ、本当ですわ。特製のベッドを用意いたしましてよ?大地の精霊よ!芽吹きとなりて絡み取らん」 ミリアの立つ足元の石畳が割れ、つる性の植物が生えてきて、身体に巻きついてくる。 「えっ?ええっ?何これっ!?」 「勇者様、これが何かお分かりになられますか?」 ローパーの肉塊を手に持ち、身動きのとれないミリアの正面に回るセリナ。 「これはね、ローパーのフェロモン袋なのですわよ。ミリアさんが先ほど切り落としになられましたね」 何か不気味なものを感じ、脂汗を流すミリア。 「いやっ、どうして、あたしをこんな目に合わせるの?」 「ホホホ、あなたみたいなお尻にカラのくっついたヒヨッ子ちゃんが勇者様だなんて笑っちゃいますわ!」 目をつりあげてセリナが言う。 「あなたなんかより、このわたくしのほうが、余程勇者にふさわしくってよ」 セリナがミリアの衣服をはだけて下着を露出させ、絞り上げたフェロモンを、胸と下腹部に念入りになすりつけた。 「ううっ、気持ち悪い・・・、助けてっセリナさんっ!」 「オホホホ、ひとりじゃ何もできないってことを思い知りなさい。大地の精霊よ!」 セリナが短く呪文を唱えると、ミリアの手足は空中で大の字に開かされてしまう。 「あっ、やっ、怖い!」 不安定な姿勢にミリアが悲鳴をあげる。 「いい格好ですわ勇者様。あなた実力もないくせに、勇者だというだけでチヤホヤされて、思い上がってるんじゃなくって?」 扉に向かってゆっくりと歩き出すセリナ。 「そ、そんな!あたしチヤホヤされてませんし、思い上がってなんかもいません!」 「お黙り!あんたなんかローパーがお似合いよ!」 「ひっ、ひぃぃっ!、や、やめてぇー!!怖いよ!お母さーん!!」 閂を外しローパーを招き入れるのを背後に見ながらミリアは絶叫した。 「ホホホ、ローパーの粘液にはデトックス効果があるから、ご安心なさってね、勇者様♪」 ローパーの触手がミリアの胸と下腹部に殺到する。 「ううう・・・」 ローパーの体に前後左右から挟みこまれ、ミリアを押しつぶす。ひときわ胸と下腹部には強い圧迫を感じる。 「ああっ」 ローパーはミリアの下着の上から揉みこむようにしてくる。敏感な突起をなぞられたミリアは思わず声をあげてしまった。 「あら、ローパーさんにやさしく愛撫されて満更でもないんじゃない?」 「そ、そんなわけないです・・・」 ローパーの触手の蠢きに鳥肌を立ててしまうミリア。言葉とは裏腹にあらぬ快感が湧き上がってくる。 「無粋な布切れは外していただかなくっちゃね」と言うと呪文を唱えだした。 「炎の精霊よ!まといし衣と宙に舞わん!」 セリナの手から放たれた炎は、ミリアが着ていた服全体に絡みつくと、一斉に燃え上がって地に落ちた。 「きゃあああああ!」 ミリアの最後の砦となっていた障壁が取り除かれると、触手はミリアの肌を直接なめ上げ始めた。 そして、腰を覆いつくす触手の数本が、ミリアの大事な入り口に圧力をかけてきた。 「あ、あ、あ、だめぇー、入っちゃだめぇー」 ミリアは必死に足を閉じようと力むが、1ミリ、また1ミリと体内に侵入されてしまう。 「いやっ、もうだめ」 大量の粘液を分泌した触手が抵抗の薄くなったミリアの中にぬるりと入ってくる。 「オホホホ、ローパーの触手で死ぬまで気持ちよくしてもらいなさい。それじゃあね。バイバイ、勇者様♪」 「あ、ん・・・あはん・・・」 ローパーは疲れを知らずにミリアを刺激する。 「あ、あ、ダメ!またいっちゃう」 「んはぁっ!」 もうこれで何度気をやってしまったか定かではない。ローパーに取り囲まれ全身に圧迫感があり、粘液に濡れた触手が敏感なゾーンをくまなく刺激していては、とても耐えられるものではない。またしても高みに登り詰めていくミリア。 来る、来る、また快感の大波が寄せてくる。 にゅぽん・・・ 不意にローパーがミリアと距離をおいた。局部に密集していた触手も糸を引いて離れていく。 「あああんっ!!」 期待していた快感をおあずけにされたミリアの腰が、うねるように痙攣する。 「んくぅううぅ!」 ど、どうして?どうしてやめちゃうの?あと少しなのにぃ・・・。恨めしい思いに苛まれ、腰をぴくぴくさせ続けるミリア。 「ゆうしゃ様、おたのしみ中のところ申し訳ありません」 突如ルルの落ち着いた声がミリアの耳に入る。 「ひゃっ!ひゃああああ!!!」 たまげるミリア。あらぬ快感に身を委ねようとしていたところを、はっきりとルルに見られてしまった。 「ルッ!、ルッ!、ルルゥーーッ!!あ、あなた、いつからそこにいたの!?」 「つい先ほどからですわ。お帰りが遅いので迎えに来てみれば、ずいぶんお楽しみのようで・・・」 はしたない姿で粘液を溢れかえらせていることに恥じ入るミリア。顔から火が出るようだ。 「そ、そんなんじゃないわよぅー!」 声を張り上げるミリア。 「でもルル。あのローパーの大群はどうしたの?」 不思議に思ったミリアが尋ねる。ふたりがかりでようやくここまでたどり着いたのに、非戦闘員のルルがひとりでここまで無事に来れた理由が分からない。 「そこはそれ、知識があればモンスターを追い払うこともできるのですよ。モンスターにはたいてい弱点というものがあり、わたしはそこをついただけなのです。これがその弱点なのです」 言いつつルルは手に持った器具をミリアに見せる。 「この液体は、わたしが調合した除草剤なのです。器具自体は市販品の加熱蒸散型のポッドなのですよ。殺虫剤用のものを雑貨屋さんで買ってきました」 アルコールランプの上に芯の入った瓶を載せ、瓶の中の液体を熱と毛細管現象によって蒸発させる仕組みだ。 「ローパーの弱点はふたつ。ひとつは火に弱いこと、もうひとつは植物の仲間であるがゆえに除草剤に弱いことなのです。この通り、ローパーは遠巻きにして襲ってこれません」 ルルの講義にいよいよ熱がこもる。 「この除草剤の特徴は、気孔を狭くすることによって呼吸を阻害し、植物を枯らしてしまうことにあるのです。除草剤には他にも、根からの水分吸収を阻害するタイプ、光合成を阻害するタイプなどがあるのですが、ローパーは活発な動きに特に大量の酸素を必要とするので、気孔を塞ぐタイプの除草剤の効果が高いのです」 「ルル・・・」 「なんですの?」 澄ました顔で尋ねるルル。 「・・・はやく・・・助けて!」 「ルルはやくかえってこないかなぁ・・・」 タオル一枚で申し訳程度に身体の前面を覆ったミリアは、森の中でルルの到着を待ちわびていた。 ルルの助けを借りてミリアはようやく遺跡から脱出できたが、そのままでは街に戻ることができない。服はセリナに燃やされてしまって替えがないのだ。仕方なくルルに買出しに行ってもらうことにしたのだが、日暮れが近づくにつれ心細さがつのっていた。 ようやくルルが戻ってきたのは、まさに日が沈もうかという頃だった。ルルを認めるなり裸のまま駆け寄って抱きしめるミリア。 「ふえええん。おそいよールルー。ひっぐっ」 大粒の涙を流すミリア。やさしく抱きしめるルル。 「よしよし、怖かったねミリア。もう大丈夫」 日が落ちたために急速に暗くなる中、ルルの体温を確認し、しっかり抱きついたまま離れないミリアであった。 |
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