第二試合。
「――今より第二試合を行います。
  死神リリム、催眠魔法使いヒュプノ。中央の闘技場へ入場してください」
 司会者シロナの声が闘技場に響いた。
 
 太陽の門より現れた女性はリリム。
 背には黒い羽、露出度の高い黒のレオタードを着ている。
 背中に大きな鎌を担ぐ。
 正しく死神の出で立ちをしている。
 観客の大きな声援を気にすることもなく「ん〜〜」と、マイペースに身体を伸ばす。
 「太陽が恨めしいわ」
 夜行性の彼女は慣れない日の光に目を細める。
 
 
 対になる場所、満月の門より現れたのはヒュプノ。
 地味なマントを羽織っていての登場。
 頭にもフードをかぶっており表情がわからない。
 フードの中で怪しく赤い瞳に光が宿る。
 その地味な風貌に観客の声援も遠慮がちである。
 
 
 対峙する二人――
 
 「第二回戦、開始……!」
 シロナが声を上げる。
 
 タタッ、合図と同時にリリムが駆ける。
 「ちっ……」ヒュプノは接近戦を嫌い小さな魔法で追い払おうとするが
 「あなた、暑苦しくはないのっ?」詠唱が終わる前に間合いを詰められてしまう。
 「っ……早いっ」
 「ふふふん」勝ち誇ったようなリリムの表情が見え、鎌が一閃。
 ビリィッ 衣服が切り裂く音。
 「とっ、突風……っ!」一瞬遅れてヒュプノの魔法の風がリリムを吹き飛ばす。
 反動でヒュプノのフードが剥がれた。
 ヒュプノの端正な顔があらわとなり、淡い水色のショートカットの髪が風にそよぐ。
 (あれ、切られたはずなのに、痛くない……)
 身体にも別段異常は感じられない。
 いや……胸のあたりが重たく感じる。
 
 −−すた。
 リリムは飛ばされながらも空中で体勢を立て直し着地する。
 そのリリムの鎌の刃先には黒い布。
 「?!」ヒュプノはその布が何かわかるまで少し時間を必要とした。
 思い至り、ばっ…とマント越しに手で胸を抑える。やはり、ない。
 「わたしのブラ!?なんで?!」
 「ふふっ、この鎌は怨霊や衣服を切ることが出来るの」
 (−−逆に言うと肉体を斬ったりは出来ないんだけど)
 「だからこんなに軽いんだよね」びゅんびゅん片手で振り回してみる。
 「黒のブラジャーを身につけているなんて。あなた、見かけどおりいやらしい人」
 目を細めブラを眺めるリリム。
 下着を衆目に晒されたヒュプノはキッとリリムを睨む。
 「く……っ、よくも。今度はわたしの力を見せるわ。わたしの眼を見なさい」
 ヒュプノの視線がリリムの瞳を貫く「う……?!」。
 (−−かかった!やはり死神でもこの技からは逃れられない!)
 虚ろな目で立ちすくむリリム。
 「形勢逆転ね。リリムちゃん」話しかけても答えない。
 「いい?リリムちゃん。わたしが脱ぎなさいと言えば、一枚ずつ脱いでいきなさい?−−いいわね?」
 「……(コクリ)」無言で頷くリリム。
 「ふふ。いい子」そう呟きヒュプノはゆっくりと目を閉じる。
 「?」少し不思議そうな表情をしてリリムは正気に戻る。
 「あれ、あたし一体……」
 「何ボーとしているの。……リリムちゃん脱ぎなさい」
 「誰が脱ぐ……!」言いかけてリリムの動きがまた止まる。
 そして眼が虚ろとなり、地面に座り込んだ。
 ゆっくりとそして大胆にブーツを脱いでいく。
 『おー』観客の感嘆する聞こえる。
 「?!」リリムが意識を取り戻すと、何故かブーツを脱ぎ捨てていた。
 「きゃっ、どうなって……」
 「あら、自分で脱いでたわよ。露出狂?」にべもなく告げるヒュプノ。
 「……催眠魔術師と言っていた。あたしに何か暗示をしたわね?」キッと睨む。
 「くすくす。正解よ。リリムちゃんはもうわたしの思うがまま。
  この大勢の観客に、一枚ずつストリップしていって。
  身体の隅から隅までじっくりと見てもらっちゃうのよ」
 「……趣味が悪い」ヒュプノの発言に身震いするリリム。
 『おおおおお』と、会場のボルテージが上がり、ヒュプノに対する声援が大きくなる。
 逆にリリムに対しては好奇な目を向けている。
 「皆が期待に答えなくっちゃ、リリムちゃん脱ぎなさ……きゃあっ」
 ヒュプノが暗示のセリフを言い切る前に遠い間合いからリリムの鎌がヒュプノに襲いかかる。
 リリムの鎌は伸縮自在なのである。
 その一撃を避けたヒュプノに、接近したリリムの蹴りが炸裂。
 更に鎌がヒュプノの身体を薙ぐ。身体をよじるが鎌を避けきれず
 今度はヒュプノのショーツが持って行かれる。
 「お姉さん、これで……おしまい!」リリムは更に追い打ちをかけようと大きく鎌を振りかぶる。
 「……突風っ」しかしヒュプノの風の魔法がなんとか間に合う。
 また距離を取られるリリム「くっ……」。
 間を入れずに
 「リリムちゃん、脱ぎなさいっ!」ここでヒュプノの暗示が。
 「……っしまっ……!」
 言葉を聞いてリリムは意識が保てなくなる。
 目が虚ろとなったリリムはゆっくりと座り込む。
 ハイソックスに指を入れて少しずつ脱いでいく。
 スラリと長い素足が徐々に露となる。
 ここで正気に変えるリリム。
 「っ!? また…っっ」脱いだハイソックスを手にしている。
 あらわとなった素足に容赦無く降り注ぐ視線。
 「……っ」
 その目から逃れようと慌てるがどうしようもなく。
 そして−−
 「素敵な格好じゃない。そのレオタードの下はどうなっているのか見てみたいわ。リリムちゃん、脱ぎなさい!」
 力強く。ヒュプノは再度暗示をかけた。
 「ひぃっ、待っ……」今度はすっかり油断をした。すぐ動くべきだったと後悔を感じた途端
 リリムの意識が沈む。
 観客が息を飲んでリリムの様子を伺う……

 リリムは膝立ちになり、
 そして焦らすようにレオタードの肩紐を外す。
 しかし、胸の部分をはだけたりはせず、
 腕で胸を寄せ谷間を強調したり、手のひらで身体を撫で回したりと艶っぽく。
 なかなか脱がずに焦らす。
 ヒューヒューと会場から口笛が聞こえるようになる。
 すると肩紐を握りじわじわとレオタードを下に下げていく。
 背筋を仰け反らせ、胸が強調された姿勢で胸を出す。
 生地に抑えつけられていた胸はぶるんっと大きく震える。
 『わぁぁ……!』観客から歓声が上がる。
 その声に気を良くしたように、腰まで下げていたレオタードを更に下ろして行く。
 形のよりお尻と、女の園が見えてくる。
 レオタードを足首につけたまま、足を軽く開き、手の平を頭の後と内ももに持って行きポーズを決める。
 全く隠すところがない。
 観客はスタンディングオベーションを持って迎えている。
 数分は経ったであろうか、ヒュプノはゆっくりと目を閉じると。
 リリムの足首よりレオタードが振り落とされる。
 そして意識が回復するリリム。
 正気に戻った瞬間に状況を把握しようとするが、彼女には信じたくない状況。
 自然とワナワナ手足が震えてくる。
 現実を受け入れ始めると、顔がだんだんと赤く、真紅に染まって行く。
 「ぃ……っっ、いやあああぁんっ!」
 大きく悲鳴上げると、正座で背を丸め胸や身体を隠す。
 「人間なんかに見られるなんて……しかもこんな大勢……ぅぅぅ」
彼女は恥ずかしさのあまり目に涙を浮かべる。

 「−−全裸、確認。ヒュプノの勝利!」
 シロナの声が大歓声にかき消される。
 
 
 
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