プロローグ・エキシマ。
中央王国王宮内。
「王様−−
エキシマ氏を大会に推した預言師が収賄の容疑で捕まりました」
「なんだと……!」
シロナの報告を受け王様が顔色を変える。
「内偵を進めていた者が口を割らせたとのことです」
「何ということだ……彼の者は何を企んでいたのか」
「それはまだなんともわかりません。エキシマ氏の処遇はいかがなさいましょうか」
「それはのう。確かもう試合は明日であろう?
エキシマ氏とはどういう繋がりをもったのか、調査しても間に合うまい。
それに−−失格、不戦敗では民は納得すまいし」
「はい。楽しみにしている市民から、暴動が起きるかもしれません」
「うぅむ。取り越し苦労だといいのじゃが。悪い予感もする。
彼女がどういう思惑があるのかわからぬ以上、警戒だけは怠らぬようにしてくれ」
「はい」
魔術師エキシマ、
大会を前日に控え街に現る−−
白いローブ、とんがり帽子、一目見てわかる魔法のシルエット。
胸の開いたシャツに超ミニスカート、網タイツ。全て白を基調としている。
そしてその相棒、使い魔−−
たぬき。
広場に差し掛かったとき
『きゃー、かわいー』と学生服を身にまとった女子学生の集団にたぬきが拉致される。
「仕方ないなぁ」
エキシマはたぬきが戻ってくるまでベンチに腰掛けて休むことにした。
エキシマがベンチで本を読んでいると、
「うわああん」と少女の泣き声。
少女の指差す先を見ると風船が空高く。
「仕方ないなぁ」
……
「ほら、もう放しちゃだめよ」
「え、お姉ちゃん、どうやって……でも、ありがとう」
少女は泣き顔が笑顔になって、大きく手を振りバイバイ。
エキシマも「はいはい」と小さく手を振る。
そんなちょっといい事をしたとき、エキシマの背後の方より−−
『……まてー!このエロだぬき〜!』
女子学生の怒声が響く。
たぬきを筆頭に、後ろから女子学生の群れが砂煙を立てて走ってくる。
「たぬき、なにやらかした?!」エキシマはさすがに驚く。
たぬきは必死で走りながら「姐さん助けて〜!」と人間の言葉で喚いている。
「はぁ、しょうがないなぁ……」
エキシマは杖の先を地面につけると
杖を引きずり大きく円を描いていく。
まず、たぬきがその円を駆け抜け
それから女子学生達がその円に収まった瞬間……
「いまだ、魔方陣発動……!」
杖に魔力を込め、エキシマが魔法の術を発動させる。
エキシマは重力を司る魔法使いだ。
描いた魔方陣の上にある物質に対し重力を思いのまま操ることが出来る。
今回は、女子学生のパンツにだけ重力を一瞬数十倍に上げた。
魔方陣が輝く。
『きゃ、きゃあ〜……!!??』
その結果がこの惨劇。
女学生らは重力によりずり下げられたパンツに足を絡ませて転倒。
拍子にスカートがぺろんと捲れお尻が丸出しになった者も。
『な、なんで!!』『やん、やあーんっ』
『えーん、見ないで、見ないで!』『えっちーーー』
遠巻きではあるが広場の人たちに好奇な目で見られてしまう学生たち。
恥じらう学生を横目にそっとその場を離れるエキシマとたぬきであった。
王宮−−
「……王様」
「うむ」コーヒーを飲みながら生返事をする王様。
「例の懸案が現実のものとなりました。
衆目の面前で、女子学生の集団が下着がずり降ろされてしまうという事件が発生。
エキシマ氏によるものと思われるとのことです」
「ぶーーーっ、ごほごほっ……」王様吹いた。