第七試合。
決勝戦前− つかの間の休憩。選手たちの控え室。

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ヒュプノの場合――


トントントン
「どうぞ」
カチャリとドアが開く。
「すみません、パン、お届けに来ました」
本日2度めのパン屋さんの配達。
バスケットいっぱいに様々なパンが並ぶ。
「良かったわ。メッセージに気が付いていないのかと」
ヒュプノは準決勝前にパン屋さんがきたとき
こっそりとバスケットの中に注文メモを入れておいたのだ。
『店にある全ての種類のパンを持って来なさい』と。
暗示の魔法の掛けられたメッセージを見たパン屋の店員さんは
慌てて支度をし、再度この控え室へ足を運んだ。
「すみません、品切れのパンがあって、焼きを待つ時間がかかってしまって」
「ふふ……間に合ったしいいわ。それで本当に全種類あるのかしら?
 私何度か足を運んでいるから全種類わかるけどー」
「全てありますよ。なんでも言ってください」自信満々な様子
何かなかったらまたいちゃもんを付けられると思い、念入りに確認してきたパン屋さん。
「それじゃあね……」いたずらっぽい表情
「パン……の耳」
「え……」
「食パンの耳をくださいな」
「あ……それはー……」
「ないの?」
「え、ええ……それは余りを売っているだけなので、商品と言うわけでは……ないのでっ」
慌てて言い訳のパン屋さんに、ゆっくりと近づくヒュプノ。
「ないなら、しょうがないかー」
「しょうが無いですよね……って近い」ぬーと顔を近づけるヒュプノ。
「貴方の耳で我慢するわ」

はむ☆

「ひゃっん!?」
「パンの耳の代わりに耳」

はむあむ。ぺろぺろ

「やめてくださぃ。耳は、弱いのでぇぇ」
「忘れるパン屋ちゃんが悪いのでーお仕置きー」

はむあむ。ぺろぺろ

「あぅん、……耳だめっ」

はむあむ。ぺろぺろ
はむあむ。ぺろぺろ
はむあむ。ぺろぺろ

「あっ、あーー、っふあーー!」

「ふー、ご馳走様。満腹よ」
ぐったり潰れているパン屋さんをよそに
「行ってくるから」
決勝戦の闘いへと部屋を出る。


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マーサマーニャの場合―――


パタン。

こちらも扉が開くところから始まる。
「マーサマーニャ、また勝った!」
ノックもせずにプリプリ入ってくるお嬢様。
「お嬢様。あれ、旦那様は?」
「パパはお仕事だって言って慌てて帰っちゃった」
唇をとがらせるお嬢様。
「それよりマーサマーニャ。どうするつもり?」
「え?」
「え、じゃないよね!」ピシャリ!
「まさか、優勝しちゃうつもり? 勇者になって魔女退治に行っちゃうの?」メイドの両腕を掴む。
「え、ええと……そこまで考えてありませんでしたが、つぎ勝てば優勝してしまうんですよね」
お嬢様の剣幕に押され当惑気味に答えるマーサマーニャ。
「…………」
「お嬢様……?」
「やだ!それはやだっ。マーサマーニャがいなくなっちゃうの嫌っ!」
一呼吸置いてから叫ぶお嬢様。
「あたし、マーサマーニャともっと一緒にいたいのに。なんでいつも勝っちゃうの……っ。ぐす……」
「えー?わーお泣きにならないでください。え……と、もしかして、それで負けるようにずっとおっしゃっていたのですか?」
「ち、ちがわよ!まーさまーにゃのばかっ!うわぁぁん!」大泣きするお嬢様。
「あらあら、よしよし、大丈夫で御座います、お嬢様。次は負けて帰って参ります。一緒に帰りましょう」。
背中に手を回して抱きしめてあげるマーサマーニャ。
「ぐす……絶対?」
「はい。それならそうと早く言ってくださればよろしかったのに。

照れ隠しで恥ずかしいこと口走ってらしたよ」と言い終わる前に、
「つぎ負けたら! 裸で! 頭に手を後ろ! そのまま3回転して! 最後にうふーんて言って!」
「!??!?! ええ?! お嬢様ぁっ、まさか、そっちも本心だったので御座いますか!? 負けられなくなってしまいますよっっ?」
「いまから、服は着たままでいいから練習して」
「あぅあぅ、お嬢様ぁ。 今度は私が泣いても構いませんか?!」
「つーん」

…… お嬢様のレッスンは試合時間ギリギリまで続いたという。

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闘技場、この試合にて真の勇者さまが決まる――

太陽の門よりヒュプノが出場する。
マントを羽織った魔導師の格好である。
怪しく赤い瞳に光が宿る。


満月の門よりメイドのマーサマーニャが現れる。
長いスカートのメイド衣装をお上品に着こなしている。
ストレートの黒く長い髪を後にひとつに束ねている。


「こんにちは、マーサマーニャちゃん、いよいよ決勝戦ね。 手加減しないわ」
「えっと、ヒュプノさん、勝負の前に一つ提案が御座います……」
「なに?」
「負けた人は裸になるルール……」
「うん?」
「……決勝戦なので、その、隠すのはなしに致しませんか?」
「え、手で隠したりはなしってこと?」
「はい、手は頭の後ろで組んで。……そ、それとその場で三回回って『うふーん』と」
申し訳なさそうな表情なメイドさん。
「ははーん、そんなに見てもらいたいわけ? いいわよ?(メイドさんだしご主人様のご命令かしらね?)」
「見られたいわけではありませんが……っ(ほ、これで負けても、変に思われない)」
「あなたも大変ねー」

『……話がまとまったようですね、さあ、泣いても笑っても最終戦! 始め!』

赤――
赤い光がヒュプノの瞳あふれ出る。
「さあ、私のマインドコントロールにかかりなさい!そして、脱ぎなさい!」
「そうは参りません! 打ち返します」
メイドさんはスカートの中からゴソゴソ何かを取り出す。
手鏡だ。
「テニスは得意で御座います」
鏡がヒュプノの姿を捉え、赤い光が反射されヒュプノの瞳に返る。
二人の動きが止まる。

『ざわざわ』

脱ぎっ…
ローブの上着に手をかけて脱ぎ始めたのはヒュプノの方であった。

『おぉぉぉ』

きっぷの良い脱ぎっぷりに感嘆の声が上がる。
下にはノースリーブのワンピースで色白の肩や腕が露出する。
「はっ……なぜ私が脱いでいるっ?!」
意識が戻りばっと手を交差し身体を隠そうとするヒュプノ。
「その能力はもうご使用されないほうが宜しいかと思われます」
ゆっくりとヒュプノに近づいていくメイドさん。
「……小手先の魔法を使ったところでマーサマーニャちゃんには通用しないし……」
悩むヒュプノ、絶体絶命。
メイドの手が迫る。
「いまだ、このくらい距離が近ければ!」
また赤い光が目前のメイドに襲いかかる。
「お待ちしておりました」
手鏡を掲げるマーサマーニャ。
「!?……」
ヒュプノの動きが止まる。
彼女は服の肩の布をつまみ横にずらす。
左右とも袖を抜くと、するりと下へと滑り落ちていく。

『おぉぉ! ヒューヒュー』

ブラ、そしてショーツと、ヒュプノの下着があらわになる。
ローブは地面に落ち山になる
「キャッ……!」
ヒュプノの意識が戻ったのはすっかり下着姿になってからだ。
慌てて手で身体を隠す。
「降参されてはいかがでしょう」
ヒュプノの意識が戻るまで律儀に待っていたメイドさん。
また攻撃の体勢に移る。
「まだよ!不意打ち!」
左の目から赤い光がメイドに襲いかかる。
「なりません!」それも鏡で弾き返す。
「今のはダミー、本命はこっちだっ」
今度は右目を開き、赤い光を浴びせる。
「……ひっ」
今度はメイドの動きが瞬間止まる。
それからメイドはスカートの裾をつまみ、それをたくし上げた。
白いニーソックスとショーツが見えている。

『おぉぉぉ!』

メイドはスカートの裾を口にはさみ
自由になった手で、ガーターベルトを外し、ショーツの両側を掴み、下ろしていく。
大事なところが露出されていく。

『うぉぉぉ!』という歓喜の声と、『スカートで見えない!!』と喚くメイドの後方の位置のひと。

すっかり脱ぎ終わり、
メイドに意識が戻ると、口にスカートの裾をくわえていることに気がつく。
ぱんつがないことにも気が付く。
慌ててスカートを下ろすメイド。
「あーんんっ! もう、もうお嫁に参れませんっ」
「よーし、もう一度時間差攻撃! えいっ」
しかし、今度は簡単に反射されてしまう。
「同じ手はいただけません!」
――ざわざわ
観客の人たちが期待している中、
ヒュプノは手を背中に回し、ブラの留め具を外し、肩の紐を両側から外す。
当然、胸が丸見えの状態。
「きゃああああ!! うぅぅ、こうなってはもう打つてが」
胸を隠し、ただただ顔を赤く染める。
「それでは、心苦しくはありますがとどめと参ります」
メイドはヒュプノのショーツを脱がすため手にかけて、一気に下ろしてしまう。
「あっ……ぃ、いやぁん!」
抵抗する間もなく素っ裸に剥かれてしまうヒュプノ。
恥ずかしそうにもぞもぞと彼女の見られたくない部分を隠す。

『全裸確認、勝負あり! 勝者マーサマーニャ!』

そして、お待ちかね
「これ以上、させるつもり!? う、約束を果さないといけないのね。 ふぅぅ……」
何度も深呼吸をしてから、頭の後ろに手を回す。
何もヒュプノの裸体を隠すものはない。

『うおぉぉぉ!』

本日一番の盛り上がり。
「はぁぅ、晒し者だ。倒してきた人らの恥ずかしさ悔しさが身にしみる……;」
そして、ゆっくりと回転していきます。

『いいぞー、こっちむけー』

など外野から野次られつつ。3回転。
「う、うふーん」と最後にヒュプノは恥ずかしさにまみれながら小さく呟きました。

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