オアシス。
-ぽちゃん-


大陸の南、砂漠地帯。
ぽつんとあるオアシスに少女二人。

「ふーぅ。ごくらくごくらく。」
開放的に伸びをするミリア。
「砂が髪に絡み付いて、困っていました。オアシスが見つかって本当によかったですね」
嬉しそうな顔をして髪を洗うルル。

二人は旅の途中でオアシスを見つけ、水浴びの最中である。
そこに忍び込む魔の手。

ガサ

「ん?…ルル、なにか気配がしなかった?」
「え。さぁ。気がつきませんでしたが…」いぶかしげに答える。
「モンスターかなぁ…そこっ」ミリアはつかんだ小石をとっさに投げつける。
こつん。手ごたえあり!
「何者なの?出てきて!」

…しばしの沈黙の後
「にゃ、に"ゃーんっ」

「なんだ猫かぁー」ほっと胸を撫で下ろすミリアと
「おやまぁ、妙に太い声の猫ちゃんですね…ふふふふ」小さく笑うルル。

そして−−

「あれあれ、荷物が無いよ?」慌てふためくミリア。
「え、ええ。確かにここにおいてあったはずです」
信じられない表情のルル。

そう、水浴び前にまとめておいた荷物、着替え、装備品。
すべての持ち物が消えていた。
「さっきのねこ、ひょっとして…」顔を見合わせる二人。


「このままの姿では身動きが取れませんし、これでも身に着けましょう」
少し引きつった表情のルルが手にしたのはオアシスの周りにある大きな葉っぱ。
二人は原始的な服作りをはじめていく。
比較的大きな葉っぱを一番隠したいところへ覆い、隙間のできそうな
カーブの部分は小さい葉を丹念に重ねていく。細くて丈夫な蔦を紐代わりにし、
ようやく完成。

「できた」嬉しそうに声を上げるミリアに、
「はい、でも動いても平気かしら」不安そうなのはルル。
「見てルル、足跡が…。きっと泥棒さんのじゃないかな」

足跡を追うと、やがて小さな村に差し掛かります。
何か手がかりは無いものかと、こそこそ人目を気にしつつ
探索をする。

「あ、あれ!」
突然、 ミリアが大きな声を出す。
指をさす向こうにミリアとルルの盗まれた服が。
「防具屋さん…?」看板を読み上げるルル。
「へい、らっしゃい。」店から頭の禿げたおじさんが出てくる。
「何か買うかい?それとも買取しようか?」
いやらしい目つきで葉っぱを身に着けた二人を見る。
ミリアは恥ずかしくなり、俯きながら
「あのっ、その服ぬすまれたわたしたちの服なんです。返してもらえませんか?」と尋ねた。
「えっ、そうなのかい?ワシもついさっき買い取ったばかりだが、もう代金は支払っているから、
ただではちょっと…」
頭をかきながら困った顔の防具屋さん。悲しい顔をするミリアたちを見かねたのか
「それならどうだ?店の手伝いをしていかないか?給料の代わりにこの服あんたらに返すよ」
「えっ、やります!」顔を輝かせるミリア。「仕方ありません」とルル。

「葉っぱの服の方がまだ…まし?」
お互いの格好を見比べた感想。防具屋さんに着るようにと指定された物が
またとんでもない服であり、二人とも今日は厄日であると感じていた。
ミリアが身に着けているのは生地の極めて少ない鎧、ビキニアーマーと揶揄される
女性用の鎧。
ルルが身に着けたのは神官用の白いローブ。ただしこちらは生地が薄く
よく見ると肌が透けてしまっている。
二人の仕事は呼び込みと、接客であった。

数時間後。
「ご苦労さん、今日はおしまいだ。約束どおり、服もっていっていいぜ」
ほくほく顔で紙幣を数える防具屋さん、やはり大反響であったのだ。
二人はやっとまともな衣服に着替えることができた。

「あ、あれ!」今度はルルが大きな声を出す。
指をさす、道路の向かい側を見ると、武器屋にミリアの剣が売りに出されていた。
「あの、すみません、それ私の剣なんです。盗まれてしまって…」
ミリアがいきさつを話す。武器屋の主人は
「え?これ盗品なのかい?防具屋の主人が拾ってきたと売りに来たんだが」
「えっ」顔を見合わせるミリア、ルル。

その後、ミリアとルルは、防具屋を強襲し、暴れまくった。
防具屋からはほかに盗まれた荷物やお金も発見できました。
猫の声は防具屋さんの猫の真似をした声だったのです。
めでたしめでたし。
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